49near国際シンポジウム企画


新シンポジウム企画案   」

NEAR国際シンポジウム2001開催企画


日 時:2001年10月9日(火)〜10日(水)
会 場:島根県立大学(島根県浜田市)
テーマ:21世紀北東アジアの地域発展を展望する
主 催:島根県立大学北東アジア地域研究センター 北東アジア地域学術交流財団

 国際シンポジウム開催「趣意」(基本コンセプト)
 北東アジアは世界史のなかで独自の地歩を築き、いま21世紀での新たな展開を図りつつある。20世紀
後半に、アジアは極めて高い経済発展を遂げ、「アジアの奇跡」と呼ばれるにいたった。90年代後半にア
ジア経済危機の試練にさらされつつ、北東アジアは装いを新たにして21世紀のグローバル世界に参画しつ
つある。
 21世紀において、世界はグローバリゼーションの大きな潮流の中で、それぞれの地域が独自の統合に向
けて動き出しているのである。その統合原理は、単なる国家間の地域連合体ではなく、国家を超えて企業や
個人のネットワークをも包み込んだ構成体となりつつあるというものである。そこでは、世界秩序は三重の
特性を持つことになる。
 第一には、これまで世界秩序は、超巨大国家と中小国家というタテの関係から構成されてきたが、これか
らはヨコの関係からの秩序も形成され、多極化してゆくという方向がある。第二には秩序の構成者、参加者
が、多様化する方向が顕著にみられる。グローバル世界において国家は、それぞれ工業化、情報化を推進す
るためにグローバル化をはかり、その点では国家の枠組み、閾値を低くしつつ、それによって自らの優位性
を確立しようとしている。第三にインターネットなど情報技術(IT)の発達により、これが社会技術基盤
となり、社会発展のあり方、地域間関係を変えようとしている。こうしてそれぞれの地域で多様な主体から
構成される多極的な世界秩序が形成されることになる。
 21世紀の北東アジアは、新しい地域発展の時代を迎える。この場合、われわれは新しい文明の発展経路
に関して3つの視点からアプローチする。第一に、発展はあくまでも社会経済の内発的な力を基盤にしてゆ
かなければならない。内発的発展は、それぞれの地域の社会経済システムの連続性をふまえること、そして
地域内の力を基盤にその活力をを生かすことにより可能となる。そのときの内発性とは、単に地域の持って
いる内発力だけではなく、外部からの力を活用する力を含むことが重要である。ここでそのような意味での
内発的発展の可能性とその発展シナリオを描くことが求められる。第二に、この発展経路は持続可能でなけ
ればならず、地域内の諸資源はもとより、他の地域の諸資源を浪費してはならず、地球環境に負荷をかけな
いことに留意しなければならない。第三にIT革命の意義を考慮に入れることである。ITは狭義の技術変
化を超えて、今後の地域社会発展のありかた、政治・経済・社会、そして文化、文明に対して大きな影響を
与えることになる。これは人々の意識を変え、社会経済構造を変える地域社会の盛衰を分ける分水嶺をなす
可能性がある。そのとき、いかにしてこのITをそれぞれの発展経路の構築において組み入れてゆくかが課
題となる。
 北東アジアにおける新しい地域文明構築のあり方は、このような視点をふまえて構想されるべきである。
 21世紀の北東アジア地域の秩序形成は、単に経済的関係を深く取り結ぶことではない。北東アジア内の
地域、企業、そして個人が、それぞれ参加主体として地域協力の柱となり、市民交流を図ることである。そ
こに一つの共通の社会空間(コモン・ソーシャル・スペース)が創出される。地域的な国際協力において社
会協力は経済協力と並立する協力のかたちであり、北東アジアの多様な文化を共有し、交流を図りながら、
次第に共通の価値空間を実現していくことになる。
 現在の一国の枠組のなかでのデモクラシー、社会開発、経済開発を超えて、21世紀には新しい地球的な
民主主義、グローバル・デモクラシー、そしてグローバル市民社会を実現することが、21世紀世界の課題
となる。北東アジアは、このグローバル世界のなかで社会協力、経済協力を進め、それぞれ社会経済的な基
盤を確立し、独自の地域文明を構築し、グローバル・システムに参画しようとしているのである。

〔日程〕
1日目 13:00〜17:00 公開講演
18:00〜20:30 レセプション(レストラン・ビューライン)
2日目  9:30〜12:00 第1分科会
13:00〜15:30 第2、第3分科会(パラレルに開催)
15:30〜16:30 全体セッション
(各分科会のコーディネーターによるまとめ)

〔第1日〕10月9日(午後)

〔公開講演〕
1.ロナルド・ドーア
2.(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス、応用経済研究所所長)
「北東アジアの社会経済と日本型システムの将来」
2.清成忠男(法政大学総長)
「北東アジア−日本における市民ベンチャー協働システム」
3.金泳鎬(韓国慶北大学教授・名古屋大学客員教授)
「北東アジアの経済発展論」
4.王浣C(中国上海交通大学教授)
「東アジアとIT(情報技術)」
.増田祐司(島根県立大学北東アジア地域研究センター長)
「北東アジアと日本の未来」

(司会)別枝行夫(島根県立大学教授)



〔第2日〕10月10日

(午前の部)

第1分科会「北東アジアにおける新しい地域発展モデル」
1)最近の北東アジアをめぐる情勢の変化、すなわち朝鮮半島での南北対話の開始と緊張緩和の動き、また
中国のWTO加盟、2008年北京オリンピックの開催、そしてアメリカの新政権の外交政策の変更など
が、この地域にいかなる変化をもたらしているかを明らかにしたい。
2)北東アジアの地域社会発展のありかたに関して、これまでの自然経済圏(natural economic territori
es)の発展のうえに、今後の発展持続可能性、内発的発展の可能性、また社会技術としてのIT等の発展
モデル構築の要件を検討し、新しい地域発展モデルの可能性を提示する。
3)これら発展構成の要件いかんが、政治・経済・社会、そして文化、文明に大きな影響を与えるが、いか
にしてこれを発展経路の構築に組み入れるかが課題となる。北東アジアにおける新しい地域文明構築のあ
り方を考察することになる。
4)北東アジアにおける多国間協力の枠組み、連携ネットワークの可能性、北東アジア経済圏の形成発展に
向け、同地域における包括的な多国間経済協力を進めるための広範な連携の促進を図る。多国間経済協力
の一形態として、開発に必要な資金をいかにして供給するか、貿易・投資環境の課題を明確化し、地域内
のリスクを管理する仕組、解決方策を探ることとする。

〔報告者〕鈴木佑司(法政大学教授)「グローバル化の進展と北東アジア」
初岡昌一郎(姫路獨協大学教授)「北東アジアの社会発展モデル」
姜英之(東アジア総合研究所所長)
「韓半島の南北対話と北東アジアの将来」
平川均(名古屋大学教授)「東アジア経済の発展構造」
〔コメンテーター〕小林博(島根県立大学教授)
〔コーディネーター〕豊田有恒(島根県立大学教授)










(午後の部)

第2分科会「地域社会開発・産業開発のネットワーク連関」
1)北東アジアにおける産業クラスター(工業集積、情報集積)の現状、及びITを基盤として形成される
情報集積とその優位性確立の可能性を探る。また、新しい技術開発、産業発展の可能性について考察を加
え、発展モデルを提示する。また、IT産業が、いかにして地域産業を興してゆくか、その経路を探り、
産業展開モデルを提示する。
2)産業クラスターを形成する多様な社会経済主体としての公的研究機関、ベンチャー・ビジネス等の現状
、そのあり方、戦略的な展開に関して検討し、組織モデルを提示する。なお、ここではいかにして情報系
集積(デジタル・コンテンツ)、人間系集積(アナログ・コンテンツ)という二つの集積形態を確立する
かが、大きな課題となる。
3)北東アジアにおける社会開発、及び地域連関を生みだし、交流を図るための諸方策を検討し、提案する
。北東アジア域内における国際輸送システムの現況及び課題を整理し、その解決策を検討することで、物
流ネットワークの改善・拡充につなげる。また、将来の北東アジア物流ネットワークについての共通の目
標を設定し、それに向けた多国間協力のありかたを検討する。

〔報告者〕蛯名保彦(新潟経営大学教授)「北東アジアにおける産業連関モデル」
増田辰弘(産業能率大学教授)「北東アジアにおける企業間連携」
三本松進(島根県立大学教授)「環黄海の地域交流モデル」
張秉煥(岡山短期大学助教授)
「ハイテク産業ネットワークと「IT不況」のグローバル伝染メカニズム」
〔コメンテーター〕野田哲夫(島根大学助教授)
〔コーディネーター〕近勝彦(島根県立大学教授)

第3分科会「共生と協働の市民社会の構築〓NGO/NPOの可能性」
1)21世紀を迎えても、分権化とアカウンタビリティをキイとする社会システム全般の改革、産業構造の
システム転換、超高齢化・少子化の進展や地域社会の構造変化に対応した社会基盤の再整備、さらには地
球環境問題の深刻化などの前世紀からの重すぎる宿題に、われわれは市民社会共通の課題として引き続き
取り組んでいかねばならない。
2)いうまでもなく現代社会で取り組むべき課題は多岐にわたっており、行政・企業組織などの既存組織では
十分に立ち向かうことが不可能である。一方では独立・自主的セクターとしてNGO/NPOは活躍の場を
広げている。これからは、市民・民間セクターの社会参加の新たな拡がりと行政や企業との有機的な連携
のもとで、新たな公共空間の創造・共働システムの形成につながり、21世紀日本の新たな地域社会形成
や産業経済構造を生み出してゆく大きな動力となることが期待されている。これらの活動は、既に国民国
家の壁を越えトランスナショナルな市民社会協力の展開を伴っている。
3)新たな市民社会活動はひとり日本にとどまらず、韓国をはじめ北東アジア諸国の社会においても広がっ
ている。それは都市と農村の双方の領域にまたがって進んでいる。そこには積み上げられてきた教育・人
的能力開発や情報基盤整備などの上に、自律的・自発的な社会・文化活動や経済活動、環境保護運動など
に関する市民社会活動の発展、定着がある。本当の豊かさを求めて、エコロジカルな未来の創出に向けて、
他者との共生・協働の生のあり方を求めて、思索と実験は今始まったばかりである。ホーリスティクな世
界観と民主的・市民的価値の構築に向けて意見交換・情報交流を自由に展開したい。

〔報告者〕井上有一(京都精華大学教授)
「市民社会の未来像とディープエコロジー」
下田博次(群馬大学教授)「日本の市民セクター活動の現段階と課題」
金才賢(韓国・建国大学教授)「韓国における帰農運動と環境NGO」
北尾邦伸(島根大学教授)「ローカルコモンズと公共性」
藪野祐三(九州大学教授)「日本のNGO/NPO活動の現状と展望」
〔コメンテーター〕井上定彦(島根県立大学教授)
〔コーディネーター〕吉塚徹(島根県立大学教授)

全体セッション(各分科会のコーディネーターによるまとめ報告)
総合司会 増田祐司(島根県立大学北東アジア地域研究センター長)

●シンポジウム開催後 シンポジウムの成果(内容)を出版刊行物とし、公刊する。




















公開講演者の経歴等

ロナルド・ドーア(Ronald P. Dore)
1925年イギリス生まれ。ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院卒業。現在、ロンドン・スクール・オブ・エ
コノミックス・応用経済研究所所長。
(主要著書)『日本の農地改革』、『学歴社会 新しい文明病』、『貿易摩擦の社会学−イギリスと日本』

清成忠男(Tadao Kiyonari)
1933年生まれ。東京大学経済学部卒。国民金融公庫調査部課長、法政大学経営学部教授等を経て、現在、法
政大学総長。
(主要著書)『日本型産業集積の未来像「城下町型」から「オープン・コミュニティー型」へ』、『中小企
業論−市場経済の活力と革新の担い手を考える』

金泳鎬(Young-Ho Kim)
1940年生まれ。慶北大学経済学部卒。大阪市立大学経済研究所教授、慶北大学経済学部教授、通商産業部部
長等を経て、現在、慶北大学人文社会学院所長。
(主要著書)『東アジア工業化と世界資本主義』

王浣C(Huanchen Wang)
1933年生まれ。上海交通大学マネジメント学院システム工学研究所教授、21世紀発展研究員実行副院長、
マネジメント科学及び工学ポスト博士流動センター長。
(主要著書)『システム工学理論方法の応用』

増田祐司(Yuji Masuda)
1938年生まれ。東京大学経済学部卒。東京経済大学教授、EC委員会第]U総局上級研究員、東京大学社会
情報研究所教授・大学院人文社会系研究科教授等を経て、現在、島根県立大学北東アジア地域研究センター
長。
(主要著書)『情報の社会経済システム』、『北東アジア地域研究序説』(編著)、『21世紀の北東アジ
アと世界』(編著)