ホシミスジ
Neptis pryeri Pryeri Butler,1871
チョウ目タテハチョウ科 |
 |
♀本土 (三瓶山,1973.7.8, 淀江)
●選定理由
本州、四国、九州に分布する。中部地方では広く分布し個体数も多いが、中国地方以西では分布は局部的になる。本県では、本土側では三瓶山、出雲市立久恵峡、浜田市三階山、三隅町大麻山に記録があるがきわめて稀であり、また、隠岐諸島(島後、西ノ島、中ノ島、知夫里島)には別亜種と思われる個体群(未記載)が生息している。
●概要
前翅長は26〜32o前後。国外では、中国大陸、台湾、朝鮮半島、ロシア沿海州に分布する。食草はシモツケ属。長野県などの多産地では、主にシモツケの自生する明るい疎林や林縁部に見られ、人家に植えられたユキヤナギ、コデマリなどの栽培植物に発生することもあるという。
本県(本土)においては、露岩地に生えるイブキシモツケを食草としており、成虫も人為環境には進出しておらず、ガレ地のようなところで見出されている。隠岐諸島では海岸部の海食崖や河川下流域の崖地に生えるミツパイワガサを食草としている。幼虫はシモツケやイワガサの葉の一部を丸く綴って巣をつくり8月には越冬態勢に入る。
本種の発生回数は、地域によって異なっており、中国地方の瀬戸内沿岸部では年2〜3回発生するというが、本県では年1回6月発生にとどまっている。成虫は、日のあたる林縁をあまりはばたくことなく滑空しながらゆるやかに飛翔する。訪花植物としては、ウツギがもっとも好まれ、イボタ、クローバーなどがある。
隠岐諸島産は、写真で見比べるとよくわかるが、本土産と比較して、前翅2室の白斑が横に大きいこと、後翅の白斑列が三日月型になることなどの顕著な地理的変異を現しており、記載はまだされていないが、別亜種になることは確実である。
●現状認識と今後の保護対策
三瓶山、三階山では近年記録が途絶えてほぼ絶滅状態で、立久恵峡では農薬空中散布の影響を受けて激減した。隠岐諸島では、道路建設や農薬空中散布の影響で個体数は減少しているが、海岸部にまだ産地が比較的多く残されている。
三瓶山など本土側における激減の原因は不明だが、小規模な露岩地はブッシュに覆われてしまったり、また、道路工事や堰堤工事のときにコンクリート吹き付けされることがあるので、知らずして生息地が失われてしまった可能性がある。自然の古い露岩地は持珠な植物や昆虫の棲み家になっているので、今後その保全が必要である。
●参考文献
福田晴夫ほか(1983)ホシミスジ.「原色日本蝶類生態図鑑U」:167−170.
門脇久志(1976)隠岐島の昆虫2.隠岐烏の蝶類.すかしば,(6):3−27.
木村正明(1989)隠岐のホシミスジの分布とその食餌植物について.NEPTIS,(2):23−26.
岡田雅裕(1952)島根県石見地方蝶類採集目録.26pp.
岡本士朗(1951)ホシミスジの新産地.昆虫石見,(2):18.
谷本幹夫(1957)ホシミスジ立久恵で採る.千鳥,(3):30.
淀江賢一郎(1994)ホシミスジ.「山陰のチョウたち」:107.
(淀江賢一郎)
|

♀隠岐 (島後, 1987.6.23, 淀江)
オス (1987.6.10,隠岐・西ノ島,淀江)
ミツバイワガサの葉を綴る越冬巣 (1995.9.30,隠岐・島後,坂田) |
 |
|